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すまんカカシ、俺だって命は惜しい。 「ちょっとイルカ、そんな怯えないでくれる?まあ、以前、俺が作ろうとしたものは食い物じゃなかったからね。材料粗末にしちゃってごめんなさい、って感じだった。それは解るよ。」 カカシ、自覚してくれてたのか。それだけでも俺は嬉しいよ。ほんと、成長したなカカシ。 「実は以前うまい店見つけてさ、イルカにもいつか食わせてやろうって思ってたんだよ。イルカ、ラーメンはいけるよね?」 ラーメンか、うん、別に嫌いじゃないな。季節的にも今は暖かいものが食べたいし。 「いいね、ラーメン、食いに行こうぜ。」 俺は立ち上がった。カカシが作るんじゃない。そう思った途端、俺は少し元気になった。ごめんなカカシ、お前が悪いわけじゃない。お前の作る料理が悪いんだ。 「イルカ、なんか急に元気になったね。」 「あ、実は俺ラーメン好きなんだ〜。」 「そうだっけ?」 カカシは疑わしそうに俺をじっと見てくる。俺はそんな視線をもろともせずにカカシに早く案内しろ、と急かした。 「盛況してんね。それだけうまいんだろうな〜。」 俺が言うとカカシはそりゃあもうね、と自分の手柄のように得意げに笑った。だからお前の手柄じゃないっての! 「へい、らっしゃい。」 親父さんが注文を聞いてくる。どれにしようかな、みそにしとくか。 「親父さん俺みそね。カカシは?」 「この間しょうゆ食ったから今日は塩にしとく。」 「はいよ、みそと塩ね。」 親父さんははきはきと注文を聞いて調理台に向かう。 「しかしカカシ珍しいな、お前外食ってあんまり好きじゃなかったじゃん。」 壁際の席でカカシはそうだっけ?と首を傾げた。 「へい、おまち!」 と声がかかって親父さんがカウンターのテーブルにラーメンどんぶりを置いた。 「ね、うまかったでしょ?」 隣にいたカカシがいたずらを成功させたような笑顔で言ってきた。 「だからお前の手柄じゃないっての。けど、うまかったよ、まじで!」 俺は満足して言った。それから勘定を済ませて店を出た。客はまだまだ絶えない。夕食時も手伝っているからかもしれないが、あの味だ。常連客はかなりいるに違いない。 「でもカカシ、いつ知ったんだよ。あの一楽って店。」 帰り道にポケットに手を突っ込みながら歩いていく。 「んー、実は任務帰りでたまたまね。」 「任務って、暗部の?」 「うん、俺よっぽど腹減ってたからかどうか知らないけど、暗部姿のままで暖簾くぐっちゃってさあ。でもあの親父さん、全然驚かずに注文聞いてきたわけよ。ちょっと驚きだったね。」 カカシは心なしか嬉しそうだ。 「あの親父さん、肝っ玉座ってるねえ。」 ただ者じゃないかもな、なんて笑った。俺だってカカシが本物の暗部だって知ってたらもっとびびってただろうからなあ。今はカカシの性格も手伝ってか、暗部と聞いても、対峙したとしてもさほど緊張もしないが、カカシと出会ってなかったら今でも緊張する存在だったかもしれないのだ。 「カカシ、」 「んー?」 「よかったな!」 俺はがしがしとカカシの頭を撫でた。俺よりもちょっとだけ身長が高いだけだから腕を大きく上げなければならなかったが、それでも半ば乱暴に撫で回す。 「ちょっ、なにすんのよっ。イルカの乱暴者っ。」 カカシはそう言って文句を言ったが振り払おうとはしなかった。 「気に入った。」 「え?」 とカカシが不思議そうな顔した。 「あの一楽ってラーメン屋気に入った。味もいいし親父さんも気に入った。カカシ、いい店紹介してくれてありがとな!!」 俺はにっと笑った。 カカシはうん、と小さく言って微笑んだ。 「なーにやってんの、イルカ。」 「別にー。」 本当は祈ってる。カカシに幸せが舞い込みますように。俺たちの時代は多くの犠牲の上に成り立っている。時代が悪かった。そう言えばそれで終わりだが、それでは収まりつかない苦しみも悲しみも俺たちは知っているし、共有している。それでもこうやってのほんの少しの温かくなる一時が嬉しくて仕方ない。カカシ、だから俺にあの店を紹介したんだろ?お前が嬉しいと感じたものを俺に教えてくれるために。 「なんかの儀式?」 見当互いなことをきいてくるカカシに俺はぷっと笑った。 「まあね〜。カカシに沢山幸せが来ますようにって、祈ってた。」 正直に言ってやったら笑い返してくるかな〜?と思ったが、意に反してカカシは黙ってしまった。うわ、外したか!!俺ってたまに陶酔して常軌を逸した行動するらしいからなあ。 「あー、まあ、なんだ。また明日なっ、カカシっ!」 俺は急に恥ずかしくなって急ぎ足で家へと向かった。おかげでカカシの顔をまともに見られなかった。ま、明日になったらまた飯食わせろって式を飛ばしてくるだろうけど。 |